健康栄養学科

2019年 12月号

普段使用していない食材・部位を、価値のある食品に作り変えていく! ―ゼミ探訪(1)―

大学では、「ゼミナール(略称:ゼミ)」という、指導教員のもと少人数で学生が主体となって特定の分野について学んだり研究したりする授業があります。今月号では、食物栄養学科(2019年4月健康栄養学科へ改組)で13のゼミがある中で「機能性食品学ゼミ」を訪問してきました! 「機能性食品学ゼミ」ではどのような研究をしているのでしょうか?

機能性食品学ゼミナール

機能性食品学ゼミナールでは、普段使用していない食材・部位に工夫を加え、価値のある食品に作り変えていく研究を行っています。研究内容を簡単に紹介します。

玄米にはミネラルの吸収を妨げる成分が含まれている! ―穀物加工食品の選択の幅を広げる―

日本人は玄米の表面を削った精白米を主食として使用しています。これは玄米を炊飯すると、炊きあがった飯粒に艶や粘りが無く、万人受けしないためです。玄米の表面を削り、処分される糠(ぬか)にはビタミン、ミネラルなど様々な栄養素が含まれています。一方、糠にはミネラルの吸収を阻害する成分も含まれています。他の穀類である大麦にも同様の傾向が見られます。そこで、玄米や大麦の糠も活用したパンを焼成するために、パン加工中にミネラルの吸収を阻害する物質を分解しながら、パンを焼成する研究を行っています。こうした研究が穀物加工食品の選択肢を広げることに繋がるのではないかと考えています。

HPLC(混合物を分離・定量する機械)

ホームベーカリー(全自動パン焼器)

カカオの代替品として注目! ―キャロブの利用価値向上―

キャロブ(和名:いなご豆)は、日本ではあまり聞きなれない食材かと思いますが、地中海地方では古くから食べられ、カカオの代替品として注目されている食材です。キャロブはノンカフェインで、カカオよりミネラルを多く含んでいますが、日本人の嗜好に適さないため、積極的な利用はされていません。そこで、キャロブを利用した加工食品を日本人の嗜好に合うよう改良を試みることにより、キャロブの利用価値を高められるのではないかと考え、研究を行っています。

ロータリーエバポレーター(減圧下、溶液を濃縮する機械)

ゼミ生の声

研究テーマ「穀類の糠を活用したパンの製パン性について」
家政学部 食物栄養学科 4年
山本 遥香 さん

―この研究を始めたきっかけ・研究内容―
私は今「穀類の糠を活用したパンの製パン性について」という、米や麦の糠を使用した研究を行っています。私がこの研究を行ったきっかけは、食品に関する研究をしたかったからです。大学入学前から食べることに興味があり、卒業研究は身近な食品を利用した研究がしたいと思っていました。この研究では実際にパンを焼くことや、食品成分の分析、試食などを行います。

―研究の面白さ―
研究は地道で失敗や困難がつきものですが、1つの失敗が新しい発見につながることもあり、私はそれが研究の面白さだと思っています。また、この研究を通して目標を達成するために、課題を発見し、段取りを考え実行する力を身につけることができたと感じています。この研究に取り組むのは今年度までですが、卒業後就職先でこの経験を生かしていきたいと思います。

―高校生へメッセージ―
将来、商品開発や食に関する仕事をしたい人には、技術的にも精神的にも卒業研究はプラスになると思うので、ぜひ頑張ってやり遂げてほしいです。

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研究テーマ「洋酒浸漬におけるキャロブパウダー中有機酸量への影響」
家政学部 食物栄養学科 4年
長浜 真紀 さん

―この研究を始めたきっかけ・研究内容―
私が研究で使用しているキャロブという食品は、血糖値を下げる作用のある成分を含むことなどから機能性食品食材として期待されています。しかし、特有の渋味や酸味などがあり、日本ではあまり普及していません。そこで、酸味成分の1つである有機酸に注目し、キャロブを食べやすい食材にしたいと思い研究を行っています。現在、キャロブパウダーの洋酒浸漬が有機酸にどのように影響するのかを検討するため、主にキャロブパウダー中の有機酸量定量を行っています。

―研究の面白さ―
研究の面白さは、1~3年生の授業で実施した実験と違い、長期間にわたり実験を行うところです。なぜそのような結果になったのかを検討するために、実験方法や改善方法などを試行錯誤して研究を進めています。予想通りの結果にならず戸惑うこともありますが、自分たちが知りたいと思うことを実験で確かめることに面白さを感じています。
研究を通して身についた、手際よく丁寧に取り組むことや探求心などを将来に生かしていきたいと思います。

このゼミを担当している先生

健康科学部 健康栄養学科
松尾 亜希子 先生


―研究にあたって―
これらの研究を行うには実験操作が伴うため、化学の基礎知識が必要になります。実験は失敗がつきものです。しかし、「失敗は成功のもと」と捉え、「運・鈍・根」の精神で、研究活動を行っています。

―高校生へのメッセージ―
現代社会は情報に溢れています。その情報を見極める力、その情報を精査する力、その情報を基に自らの考えをまとめて発信していく力を養うことは、大学における研究活動のみならず、将来、管理栄養士として活動する際の大きな財産となります。研究のヒントは身近なところに転がっています。常に探求心を忘れることなく、「なぜ?」「どうして?」の感覚を大事にし、未知のものを知る喜びを大切にしながら一緒に研究に挑戦しましょう。