看護学科

2021年 9月号

地域の人々の健康を守る
保健師を養成する
保健師課程の授業紹介(1)

本学の看護学科では、必要な単位を取得すれば卒業と同時に看護師国家試験受験資格を取得できますが、保健師課程を履修すると、加えて保健師国家試験受験資格も得ることができます(保健師課程の履修可能人数は最大12名)。
コロナ禍において注目を浴びた、保健師という職業。保健師がどのような場でどのように活躍するのか、保健師に必要なのはどのような力かを知るために、保健師課程の授業に密着してきました!

保健師課程の授業紹介(1)

3年前期「公衆衛生看護管理論」

保健師をめざすために、本学では1・2年生のうちから保健師国家試験受験資格に必要な授業をとった上で、3年生から「公衆衛生看護学」に関する授業を受け、4年生で実習を行います。「公衆衛生看護管理論」はその授業の1つ。地域に住む人々の健康を守るために保健師が行う活動に求められる管理機能について学びます。
今回見学した回では、近年重点課題とされている健康危機管理が取り上げられていました。
地震や豪雨といった自然災害、公害やテロといった人為災害、感染症拡大など、人々の健康を脅かすことが起きた際には、厚生労働省などを中心とした各省庁・都道府県・市町村が連携して対応を取らなければなりません。中でも保健師は地域住民の健康管理の最前線で活躍します。授業では、何かが起きた際の体制はどのようなものか、体制の中で都道府県あるいは市町村の保健師はどこに位置づけられ、どんな働きを求められているのかを学びました。

また、何らかの健康危機が発生した際はフェーズ(対応期)ごとに必要な対応が変わります。例えば大きな災害が起きた場合、発生直後は支援体制を整えることや救命救急が行われ、その後避難所などでの生活が中心となる時期には住民の健康相談実施や健康状況の把握、さらに復旧から復興にかかる時期には新しい生活のための支援や心のケアチームとの連携、といったように、その時に必要な対応を行っていきます。
そして、これらを可能にするためには、災害等の起こる前の平常なときに、災害弱者といわれる人がどこに住んでいるのかといったリスクの把握、連携体制の構築、災害等を想定した訓練など、しっかりと準備をしておく必要があります。
日本では台風・地震などの自然災害を避けることはできません。またSARSや新型コロナウイルスのような感染症の拡大もいつどこで起きるかわかりません。どんな状況下でも住民の健康を守るために、保健師が大きな役割を担っていることを知りました。

3年前期「公衆衛生看護活動展開論」

地域には、さまざまな健康状態、発達段階の人々が生活しています。地域住民が自らの健康課題・問題をとらえ、主体的に解決していくのを保健師としてサポートするためには、それぞれの対象者ごとの特性を知り、対象者を支えるための法・制度や社会資源、健康問題の解決法を理解していなければなりません。この授業では、特に現代社会における主要な健康課題・問題に対する支援方法を具体的に考えていきます。
この日の授業では、名古屋市在住の林京香さんとそのご両親をお招きしました。林京香さんは脊髄性筋萎縮症のため幼いころから人工呼吸器をつけて生活しており、地域の保育園・小学校・中学校を経て、現在は名古屋市内の高校に通っています。授業では、京香さんのお父様から、京香さんが地域の学校で医療的ケアを受けながらどのように学んできたのか、実際の写真を交えてご紹介いただきました。また、医療的ケア児を含むすべての子どもが一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」とはどのようなものなのかを教えていただきました。

お父様による講演

お父様による講演のようす。インクルーシブ教育について、丁寧にご説明いただきました。

京香さんとお母様

京香さんとお母様。京香さんの車いすには、人工呼吸器が搭載されています。

現状では「インクルーシブ教育」は実現しているというにはほど遠い状況であり、実際、京香さんのご両親も学校・名古屋市教育委員会に働きかけ、幾度もの話し合いを重ねた結果、京香さんの地域の学校への通学、そして高校進学が実現したそうです。「インクルーシブ教育」を推進していくには、多くの人が現状を知り、問題意識をもつことが第一歩です。今回、京香さんのご両親に直接お話を伺うことができ、学生たちには「自分たちにできることは何か」を考える大きなきっかけとなりました。将来保健師としてさまざまな状況にある人を支えていく立場になった際にも、この学びが生かされるはずです。