健康栄養学科

2023年 12月号

卵子の質と食品成分、
栄養素との関係性の解明
 ー研究者紹介ー

健康科学部 健康栄養学科 辻 愛 講師

専門分野

応用栄養学

研究テーマ

卵子の質と食品成分、栄養素との関係性の解明

【動画】


Q. 研究内容について教えてください。

 卵子の質の低下は不妊や流産、染色体異常の原因の一つと考えられています。卵子は減数分裂が途中で止まった状態で卵巣にストックされていますが、ホルモンの刺激を受けて減数分裂が再開します。卵子の質が低下すると、減数分裂する時に染色体が均等に分かれないというエラーが起きやすくなったり、受精や卵割、発生が障害されたりすると考えられています。
 私は、卵子の質と食品成分や栄養素との関係性について研究しています。母体の過度な精神的ストレスは、ホルモン分泌の乱れや酸化ストレスなどを引き起こし、卵子の質を低下させると考えられています。食品成分の中には酸化ストレスの原因である活性酸素種を減らしたり、精神的ストレスによる減数分裂異常の増加を抑制したりする成分が存在することを明らかにし、食品成分が精神的ストレスから卵子を保護する可能性があることを見出しました。
 また、水溶性ビタミンの1つであるビオチンの不足によって卵子の質が低下し、減数分裂異常が起きやすくなることを、マウスを用いた実験から明らかにしました。現在、そのメカニズムを分子レベルで解き明かしたいと考えています。

Q. 研究を始めたきっかけを教えてください。

 卵子は体細胞や精子と異なり、生後に新たに作られることはなく、加齢とともに卵子も老化していきます。
今の技術では、低下した卵子の質を元に戻すことは難しいです。また、不妊治療は卵子の採取や定期的な通院など身体的、経済的な面で負担がかかります。卵子の質を維持することの重要性や不妊治療の大変さを知り、栄養学を研究する者として栄養という手段を使って、不妊で苦しむ方々の助けになりたいと思い研究を始めました。
 卵子の質の低下は、加齢によるところが大きいですが、偏った栄養(不足・欠乏や過剰状態)や代謝の乱れによっても起きやすくなることがわかってきました。
 では、どの栄養素や栄養状態が、どのように卵子の質にかかわっているのでしょうか。卵子の質から見た最適な栄養とは、何なのでしょうか。また、食品成分によって卵子の質低下を防ぐことはできないのでしょうか。
 栄養素や食品成分と卵子の質との関わりを解き明かすことで、卵子の質低下を抑制・改善するための栄養学的手法の開発をめざして、日々研究しています。

Q. その研究が『未来にどう生かされてほしいか』を教えてください。

 第1子出産時の母親の平均年齢は1990年では27.0歳でしたが、2020年では30.7歳であり、晩婚化に伴って、第1子出産時の母親の平均年齢が高くなっています。
 また、高齢出産も増加しています。35歳以上で出産することを高齢出産といいます。近年の高齢出産の割合は横ばいになってきましたが、昔に比べると約2倍に増加しています。
 高齢になればなるほど、不妊のリスクは高くなります。卵子の質低下だけが不妊の原因ではありませんが、卵子の質を長く維持することは不妊リスクの軽減につながると考えています。
 私の研究は動物レベルでの研究なので、ヒトでも同様のことが起きるのか、ヒトにおける食品成分の有効性や安全性など検討すべき課題は山積みです。しかし、一歩ずつ研究を積み重ねていけば、食生活を改善することで病気を予防したり食事療法を行ったりするように、不妊においても科学的根拠に基づいた食事の提案や栄養素、食品成分の摂取により予防や治療のサポートができるのではないかと考えています。少しでも不妊で苦しむ方々の助けになることを期待しています。

高校生へメッセージをお願いします

「食」は生きていくうえで不可欠です。そのため、管理栄養士の仕事は「食」と「栄養」を通して、健康な人から病気の人、赤ちゃんから高齢者の方まで幅広く人々の健康に貢献できる点でおもしろい職業です。職域も広く、企業や病院、学校、研究職、行政まで多様なので、自分にあった場所を選択できます。食べ物や食べることに興味がある方、「食」や「栄養」でヒトを笑顔にしたい、ヒトの健康に携わりたいという方は、ぜひ管理栄養士をめざしてください。

プロフィール

健康科学部 健康栄養学科 辻 愛 講師


 名古屋女子大学 健康科学部 健康栄養学科 講師。管理栄養士、栄養教諭(専修)
滋賀県立大学で栄養学について学び、管理栄養士を取得。博士号を取得後、大学の研究員、奈良女子大学助教を経て、現在に至る。

略歴
滋賀県立大学大学院 博士(学術)取得
神戸大学 研究員
神戸学院大学 研究員
奈良女子大学 助教
名古屋女子大学 講師