児童教育学科

2024年 3月号

保育者に求められる専門性の国際比較
-子どもとどう関わるのかー

児童教育学部 児童教育学科 門松 愛 講師

専門分野

比較教育学

研究テーマ

保育者に求められる専門性の国際比較-子どもとどう関わるのかー

【動画】


Q. 研究内容について教えてください。

保育者に求められる専門性が国によってどう異なるのか、また、なぜ異なるのかを研究しています。保育者に求められる専門性には、専門知識のほか、例えば、ピアノなどの技術、明るさなどの性格やコミュニケーションなどの能力も含まれます。そのなかでも、本研究では、子どもとの関わりに注目し、保育者が子どもとどう関わるべきとされているか、そのとき、どのような技術や応答が求められているのかに焦点を当てています。また、なぜ求められる専門性が異なるのかも大事な点です。各国で保育が成り立つ過程には、必ず保育の思想があり、社会状況や歴史があります。このような背景から深く考え、各国での保育者に求められる専門性を明らかにすることをめざしています。現在は、日本、アメリカ、ベトナム、バングラデシュなど多様な国を対象として研究を進めています。研究方法としては、主に保育者養成課程で使用されている教科書を分析したり、現地調査をおこなって実際の教員の実践を分析したりしながら研究を進めています。

Q. 研究を始めたきっかけを教えてください。

一番のきっかけは、アメリカの発達に適した保育(Developmentally Appropriate Practice)という考えを知り、その教科書を分析したことです。日本の保育に関する教科書では、子ども理解がとても重視され、多様な子どもの事例が載っています。しかし、そのアメリカの教科書では、子どもの事例がほとんど無く、保育者が身につけるべき技術が列挙されていました。この違いはどこから来るのか、保育者に求められるものがどう違うのかと興味をもったのが最初のきっかけです。
もともと、大学院時代からバングラデシュの就学前教育を研究しており、その後ベトナムやシンガポールなど多様な国の保育実践を見る機会がありました。そのなかで、保育者の関わりの違いや実践の違いに興味をもっていました。さらに、名古屋女子大学で保育者養成に携わるなかで、保育者の専門性の向上について考える機会が多くありました。アメリカの教科書分析をきっかけに、保育者に求められる専門性を国際比較することで、日本で求められる専門性の特徴やさらに専門性を高める方向性が見えてくるのではないかと思い、この研究を始めました。

Q. その研究が『未来にどう生かされてほしいか』を教えてください。

保育者に求められる専門性を国際比較することで、日本の保育者が伸ばしていきたい点や、今とは異なる専門性養成のあり方などが見えてくるのではないかと考えています。
保育は、各国の文化に根付いたものですから、国際比較を通して日本的な特徴を見出していきたいです。そうすることで、日本の保育者の気づかれていない専門性に気づくこともできるかもしれません。このように保育者の専門性について深く考えていくことで、より良い保育の実現につなげていきたいと考えています。例えば、子どもとの関わりでも、共感的な関わりや思考を促す関わりなど世界で何が重視されているかは様々です。日本で重視されることと世界で重視されることを比較し、日本の保育の良さや多様な関わり方を考えていきます。そして、保育者養成課程での専門性養成のあり方も考えていきます。これらを通して、子どもの育ちがさらに充実していくための保育を考えるヒントとして、本研究が生かされていけば良いなと思います。

高校生へメッセージをお願いします

子どもは可能性に満ちていて、とてもかわいく、面白いです。そんな子どもの笑顔を見るために何ができるか、どう関わるとよいのかを考えるのが、保育のやりがいであり、面白さだと思います。よい保育者ってどんな保育者なのか、よい保育者になることをめざして一緒に考えていきましょう。

プロフィール

児童教育学部 児童教育学科 門松 愛 講師


京都大学大学院教育学研究科博士課程を修了し、教育学博士を取得。専門は比較教育学。平成29年度より名古屋女子大学文学部児童教育学科講師。
【単著】門松愛『バングラデシュの就学前教育―無償制度化の構造的特徴と人びとの教育選択―』明石書店、2021年。(日本比較教育学会平塚賞特別賞受賞)
【共著】山本一成編『保育原理』七猫社、2018年(担当:「第8章 世界の保育の現状と未来」) 杉本均・南部広孝編『比較教育学原論』協同出版、2019年(担当:「第15章 東南アジア・南アジアの教育 第5節 バングラデシュの教育」)など
【論文】門松愛「ベトナムの保育者養成課程における保育技術の教授―教科書分析から―」『名古屋女子大学紀要 人文・社会編』第68号、2022年、151-164頁。 門松愛「バングラデシュにおける教師主導・知識獲得志向の就学前教育の支持理由-教師と母親の価値観に着目して-」『国際幼児教育研究』第24号、2017年、1-16頁。(国際幼児教育学会学術賞受賞)など