学部学科トピックス

2024.02.13
生活環境学科

【研究者紹介】「19世紀イギリスの家政書とその翻訳書の比較」 山田 千聡 助教

本学の教員が、研究者としてどのような研究をしているかインタビューした「研究紹介」シリーズ。今回は山田 千聡 助教です。

 

家政学部 生活環境学科 山田 千聡 助教

専門分野
19世紀イギリス女性史

◆研究テーマ
19世紀イギリスの家政書とその翻訳書の比較




【動画】

Q 研究内容について教えてください

大学や大学院では18~19世紀のイギリスにおける家族法や文学作品について研究していました。
女性の生活や女性が描かれた作品に興味があったため、イギリスで女性史が学べる研究科に進学し、そこでヴィクトリア朝時代の雑誌や料理書、家庭経営の方法を記した家政書に出会いました。当時は写真の代わりに美しい挿絵が使用されており、紙面に掲載された情報量の多さや内容の面白さに驚かされました。それ以来、19世紀の女性向けに書かれた雑誌や書物の内容を分析し、比較することを研究テーマにしています。
また、欧米で出版された料理書・家政書が明治時代の日本に輸入され翻訳されていることを知り、慣れないながらその翻訳書を読み解き、原典との比較を行っています。

 

Q その研究を始めたきっかけを教えてください

企業に勤めている時に「女性らしい」仕事、例えば受付業務やお茶の準備などを行っている中で、どうして男性と女性の仕事が分けられているのか気になりました。
調べると男性は外で働き、女性は家庭の仕事をすべきという性別役割分業は、イギリスで始まった産業革命以降に強化されたことを知りました。以前からイギリスの大学で学ぶことに興味があったため、思い切って退職し、イギリスの大学院の歴史学研究科に入学しました。歴史学やジェンダー学に関連する授業を履修する中で、『ビートン夫人の家政読本』という著名な家政書に出会い、その内容の面白さに惹かれて修士論文のテーマにしました。当時の家政書は家庭における女性の役割を明確に述べており、対象とする読者の階級や宗教などによって内容が大きく異なる点に興味を持ちました。また、研究の最中に『ビートン夫人の家政読本』の抄訳本と出会い、その経緯や翻訳された内容に関する研究を続けています。

 

Q その研究が『未来にどう生かされてほしいか』教えてください

私はずっと人文学を学んできましたが、自分の研究が将来役に立たなかったり、必要とされていないのではないかと思い悩んでいました。しかし、授業でその成果を披露し、興味を持ってくれる学生に出会い、どんな学問からも必ず学べることがあるのだと理解できるようになりました。
私の使命は、過去に生きた女性たちの生活の知恵や思考を後世に伝えること、そして学生の皆さんに人類が築いてきた文化を学び、幅広い教養を身につけてもらうことだと考えています。海外の文化を学ぶことは、自分の恵まれた環境に気づき、自国の文化に興味を持つきっかけにもなります。自文化・異文化をよく理解し、寛容な心で世界の人々と触れ合える学生が一人でも増えてくれたらよいなと思っています。

 

◆高校生へメッセージをお願いします

自分のやりたいことが見つかっていない方、進路選択に迷っている方、大丈夫です。やれることをやっているうちに、やりたいことが見えてくる場合があります。
私のように社会人になってから進路を変更したり、留学したり、進学することも可能です。まずは少しでも興味のあること、または得意なこと・やれることに真剣に取り組んでみましょう!
本学の家政学部では、多種多様な分野の授業を履修することができます。様々な学問や個性的な教員と出会い、ぜひ興味関心を広げてください。

 

プロフィール
家政学部 生活環境学科 山田 千聡 助教
大学では外国語学部に所属し、主に英語とイギリスの歴史を学びました。大学院の修士課程に進学した後、憧れていた民間企業に就職しました。管理部門に配属され、経理、受付、庶務、福利厚生、社内行事など、多くの業務を経験しました。学生時代に留学したことがなかったので一念発起して退職し、イギリスの大学院に留学しました。無事修士号を取得してから帰国し、再度日本の企業に勤務して通訳・翻訳業務に従事しました。その後、非常勤講師の仕事をいただき、大学で勤めるようになりました。様々な大学で勤務した後、2021年4月に本学へ着任しました。