学部学科トピックス

2024.04.12
短大 生活学科

【研究者紹介】「現代日本におけるファッションデザイン/ 衣服の循環型システム構築に向けたファッションデザイン」 小田 久美子 准教授

本学の教員が、研究者としてどのような研究をしているかインタビューした「研究紹介」シリーズ。今回は小田 久美子 准教授です。

 

短期大学部 生活学科 小田 久美子 准教授

専門分野
ファッションデザイン

◆研究テーマ
現代日本におけるファッションデザイン
衣服の循環型システム構築に向けたファッションデザイン




【動画】

Q 研究内容について教えてください

この研究の最終目的は、使用済みのユニフォームを反毛して再生布を作り、新たなユニフォームにリサイクルして再利用することを繰り返す衣服の循環型システムを構築することです。反毛とは、衣服を切り裂いて繊維状にして再資源化する技術です。研究対象のユニフォームは、一般の家庭から廃棄される衣服と比較して、交換時期に一括して手放されるため回収が容易です。また、材料とデザインが統一されており反毛前の分別や付属品を除去する手間と労力を省けるので、リサイクルに適していると考えて研究対象にしました。このシステムでは、再生布でユニフォームを生産する工程において廃棄物となる裁断くずを出さない環境に配慮した衣服設計をめざしています。このシステムを構築するために、反毛のリサイクルに適した男女兼用半袖シャツ形式のユニフォームをデザインして試作しました。今後は、このユニフォームを反毛して作る再生布のデザインを検討する予定です。

 

Q その研究を始めたきっかけを教えてください

日本は様々なモノづくり分野で諸外国から高い評価を得ています。中部地方はファッションと関わりの深い繊維や衣服に関連した業種の会社が多くあり、研究活動を通して素晴らしい技術を持つ職人さんや企業の方々にお会いする機会があります。こうした優れた技術に支えられて多くの素晴らしいファッション商品が提供され、私たちの生活を豊かなものにしてくれます。しかし、その一方では大量に生産された衣服が大量に消費され、廃棄されています。捨てられた衣服が再生利用されるのはごく少量で、大半は焼却や埋め立てゴミとして処分されます。大量の衣服がゴミになり、環境を破壊することにつながると考えた時に、環境に配慮した衣服や再生利用のシステムが必要だと思い研究を始めました。また、近年はファッションの生産地が海外に移行して、国内で繊維や衣服を生産する規模が年々縮小する現状を残念に感じていました。現在の研究対象である反毛は、モノを大切に使う日本らしい技術なので、この技術を応用したファッションデザインを提案して、国内の繊維産業や衣服製造の技術力の高さを多くの人に知っていただく機会にしたいと考えたことも研究を始めたきっかけの一つです。

 

Q その研究が『未来にどう生かされてほしいか』教えてください

ファッションデザインは流行の衣服をデザインすることや美しさを追求することが注目されますが、「服を着る人の幸せに貢献する」や「着る人と作る人の困りごとを解決する」などもデザインの大切な役割だと考えています。 近年の「環境に配慮したファッション」という考え方では、衣服はできる限り捨てないことが推奨されますが、捨てる衣服があるから新しい衣服が作られ、買うことができる、着ることを楽しめると思います。「衣服を捨てない」という努力や工夫も大切ですが、捨てられた衣服が適切に処理されるシステムを構築することや、廃棄しても環境に影響しない材料を開発する、処分しやすいデザインを提供するなどの作り手側の提案によって、ファッションを楽しみながら環境にもやさしい衣生活が実現することを願っています。

 

◆高校生へメッセージをお願いします

皆さんはファッションや衣服分野を学ぶ人に対してどのような印象を持たれるでしょうか。「デザイン画を上手く描ける人、衣服を作る技術がある器用な人」などの意見をよく耳にしますが、必ずしもそうした技術が必要な分野ではありません。もちろん、大学では衣服に関する深い知識や技術を学ぶことができますが、毎日、誰もが着用する衣服や装飾品に関する基礎知識についても学びます。より豊かな生活を送るためのファッションについて学んでみませんか。

 

プロフィール
短期大学部 生活学科 小田 久美子 准教授
名古屋市立大学大学院芸術工学部研究科、博士前期課程修了。神戸文化短期大学服飾学科専任講師、大阪樟蔭女子大学学芸学部被服学科専任講師を経て、2013年から現職。第21回ファイブ創作ファッションコンテスト(レディース部門)ファイブ賞受賞、第6回すみだファッションコンペティション アクセサリー部門賞受賞、他ファッションコンテスト3件入選。単著に「柿渋紙衣和紙の素材研究および服飾デザイン」(『繊維製品消費科学』第55巻第5号、2014年)、共著に「ニードルフェルティングによる無縫製衣服デザインのための基礎研究」(『名古屋女子大学紀要 家政・自然編』第66号、2018年)などがある。